5,000円以下でも普段使いには足りるが、不満の出る場所はだいたい決まっている。ワイヤレスイヤホンのコスパ最強を探すなら、音質の売り文句より先に、電池・コーデック・防水等級・技適の4欄が埋まっているかを見たほうが早い。EARSOLEでこの価格帯に入る3機種を同じ行に並べたところ、再生時間が数字で書いてあるのは1機種だけで、防水等級は3機種ともゼロだった。
5,000円という線は、国内の相場のどこを切っているか
国内でワイヤレスイヤホンを安い順に並べていくと、100円ショップの1,100円クラス、300円ショップ系の1,650円クラス、3,000〜5,000円のいわゆるコスパ帯、10,000円前後の中級機、30,000円を超える上位機、という並びになる。5,000円以下という条件は、下の2つと上の2つを同時に外す指定で、実際に候補が集まるのは3,000〜5,000円あたりだ。新生活の3〜4月や、7月・11月のセール時期にこの帯の入れ替わりが早くなるのも、同じ理由による。
EARSOLEでこの帯に入るのは3機種で、執筆時点の表示価格は$14.99・$19.99・$23.99。1ドル155円で機械的に換算すると、約2,300円・約3,100円・約3,700円になる。3台とも5,000円の上限には余裕がある一方、いちばん安い1台でも100円ショップのクラスの倍はする。表示はUSDなので、円建ての支払額は決済時のレートと送料で動く。
この価格で構造として期待できるのは、ケースに戻せば充電される仕組み、片手で押せるボタンかタッチ面、残量が何らかの形で分かること。ここまでだ。安いワイヤレスイヤホンを見ていて、LDACのような高ビットレートのコーデック、耳に届く騒音そのものを打ち消すANC、装着検出、マルチポイントまで一行に並んでいる商品ページに当たったら、その一行がどれくらい具体的かを先に確かめたい。今回の3機種には、そうした記載はどこにもない。
値段が下がると、商品ページから先に消える4欄
「安いのはやっぱりダメなのか」という問いに一般論で答えても意味がない。イヤホンのおすすめを安さから絞っていくと、消えていくのはいつも同じ場所だからだ。以下は自社の3機種を材料に、その4か所を自分の目で確認する手順として書いている。
1. 電池の数字が、足し算として成り立っているか
Series 161の商品ページは、1回の充電で4時間再生でき、ケースがもう1回分の充電を足して合計24時間になる、と書いている。この書き方どおりに足すと合計は8時間で、24時間には届かない。単体の4時間か、ケースが何回分の充電を持つかという記述か、どちらかが正確でないということになる。数字が2つ以上出てきたら、掛け算と足し算で辻褄が合うかを見る。低価格帯の説明文でいちばん見つかりやすい種類の食い違いがここだ。
残る2機種は、再生時間そのものが書かれていない。$23.99のセミインイヤー機は「実際の再生時間・通話品質・通信距離は、音量や端末設定、環境、使い方で変わります」という断り書きだけを置いている。バッテリー容量のmAhは3機種とも記載がなく、充電端子の種類も3機種とも書かれていない。
2. コーデックの欄に、何か名前が入っているか
国内はiPhoneの利用者が多く、AACを前提に語られることが多い。ところが3機種の掲載仕様には、AACもSBCもLDACも、コーデック名が一つも出てこない。$23.99の機種が「標準的なBluetoothオーディオに対応する端末」と書いているだけで、どの形式で受けるかは書かれていない。Bluetooth SIGの技術概要も、Bluetooth Classicが「主にワイヤレスの音声ストリーミングを可能にするために使われ、ワイヤレススピーカーやヘッドホンの標準的な無線プロトコルになった」と説明するにとどまり、どの符号化を使うかは製品側の記載事項になる。
バージョンの扱いも三者三様だ。Series 161はBluetooth 5.4と明記し、接続の速さと低遅延をうたっている。$19.99のFactory Direct機は逆に、「Bluetoothのバージョン、電池の持続時間、アクティブノイズキャンセリング、防水、マイク性能、認証について、資料の提供がないため主張しない」と商品ページ自身が書いている。
3. 防水等級の行が空いていないか
IPX4やIPX5といった等級表記は、3機種のどこにもない。$23.99の機種は「このペアには防水等級の記載がありません」と自分で明記したうえで、水分やスプレー、湿気の多い場所を本体とケースの両方から遠ざけるよう案内している。Factory Direct機も、防水については主張しないと書いている。
注意:防水等級の記載がない機種は、汗をかく場面や雨の中での使用を前提にしないほうがいい。等級が書かれていないことは、水に弱いという意味でも強いという意味でもなく、判断材料がないという意味だ。
4. 技適マークについて何か書いてあるか
国内でBluetooth機器を使うときに確認される表示で、海外から直接届く低価格帯では記載が省かれていることがある。3機種の商品ページには、技適マークに触れた記述がない。Factory Direct機にいたっては、認証全般について資料がないので主張しない、と書いている。記載がないことと取得していないことは同じではないが、こちらから取得済みと書くこともできない。気になる場合は、注文前に型番を添えて販売元に表示の有無を問い合わせるのが確実だ。
ワイヤレスイヤホンのコスパ最強は、同じ行に並べたときに見える
4欄を機種ごとに追うより、同じ項目を横一列に置いたほうが早い。下の表は、3機種の商品ページに書かれている内容だけを写したもので、空欄は「当店が確認できなかった」ではなく「商品ページに記載がない」という意味で使っている。
| 項目 | Series 161(約2,300円) | Factory Direct 白(約3,100円) | セミインイヤー 黒(約3,700円) |
|---|---|---|---|
| 形状 | 低背の一体型、耳に収まる形と記載 | ステム型のセミインイヤー、イヤーピースなし | セミインイヤー、深い密閉をしない |
| Bluetoothのバージョン | 5.4と記載 | 主張しないと明記 | 記載なし(「標準的なBluetoothオーディオ」とのみ) |
| ドライバー | 13mmと記載 | 記載なし | 記載なし(ステレオとのみ) |
| 再生時間 | 単体4時間・合計24時間と記載(足し算が合わない) | 主張しないと明記 | 記載なし(変動する旨の断り書きのみ) |
| バッテリー容量(mAh) | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
| 残量表示 | ケース内蔵のLED数字表示と記載 | 記載なし | 記載なし(出品画像でケース前面の細いライトが見えるのみ) |
| イヤーピース | 2サイズ付属とギャラリー画像に表記 | シリコンチップは写っていないと明記 | 記載なし(挿し込まない形状) |
| 通話マイク | クリアな通話と記載 | マイク性能は主張しないと明記 | 音声集音マイク内蔵と記載 |
| ANC(耳に届く音を打ち消す) | 記載なし | 主張しないと明記 | 搭載しないと明記 |
| 防水等級 | 記載なし | 主張しないと明記 | 記載がないと明記 |
| マルチポイント | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
並べてみると、価格が上がるほど仕様欄が埋まる、という関係にはなっていない。いちばん安い約2,300円の機種だけがバージョンとドライバー径と再生時間を数字で出していて、上の2機種は形状と付属品の説明が中心だ。ただし数字が多いほうが正しいとも限らない。Series 161の再生時間は、その数字自体が内部で食い違っている。
3機種とも海外の倉庫からの発送になる。上のグラフィックが倉庫の写真をそのまま残しているとおり、価格が下がる理由の一部はこの流通の短さにある。一方で、届くまでの日数や返品・交換の窓口は、国内の量販店と同じにはならない。円建ての請求額も、決済時のレートと送料、輸入時の手数料の扱いで変わる。注文前に、その回の配送方法と返品条件を注文画面で確認しておきたい。
買ったあとに効いてくるのは、耳に触れる側と、つながらなくなったときの手順
仕様欄を読み終えたあと、実際に毎日効いてくるのは2つしかない。耳のどこに何が当たるかと、切れたときに自分で戻せるかだ。
耳側から見ると、3機種は2つに分かれる。Series 161のギャラリー画像には「2 Sizes Soft Ear Tips for option」という英語の表記があり、シリコンのイヤーピースが2サイズ用意されていることになっている。残る2機種はイヤーピースを使わない形で、Factory Direct機は「シリコンチップは写っていない」と明記し、$23.99の機種は耳の中に深く入れない形状だと説明している。耳の穴の径が平均から外れている人には、サイズを替えられる余地があるかどうかが効いてくる。挿さない形は圧迫が少ない代わりに、歩行中の保持は耳の形しだいになる——$23.99の商品ページ自身が、装着の安定は耳の形によるもので、万人に同じ約束はできないと書いている。
接続側は、3機種とも初回のペアリングまでしか書かれていない。$23.99の機種は手順を載せていて、ケースから出す、スマートフォンのBluetooth設定を開く、一覧に出たEARSOLEの項目をタップする、という並びになる。iPhone側の一般的な手順も同じで、Appleの案内では「設定」で「Bluetooth」をタップしてオンにし、「自分のデバイス」に表示されたアクセサリ名をタップする、とされている。
問題は、完全ワイヤレスでいちばん多い不具合が初回接続ではなく、左右の同期が外れて片側だけ音が出なくなる状態だという点だ。3機種とも、同期をやり直す操作は書かれていない。Apple側の案内では、つながらないときはまずアクセサリの電源を入れ直し、それでも駄目ならペアリングを解除して登録し直す、という順番になっている。そのうえで両方をケースに戻してフタを閉じ、そこからやり直すのが実際の手順になる。この一文が商品ページにあるかどうかは、買う前に見ておくと後が楽だ。
この価格帯について、実際に届く質問
5,000円以下でノイズキャンセリングは付くのか
今回の3機種でいえば付かない。$23.99の機種は商品ページで「アクティブノイズキャンセリングはない」と自ら書き、内蔵マイクは通話で自分の声を拾うためのもので、周囲を静かにするためのものではないと説明している。残る2機種にもANCの記載はない。通話側のノイズ処理にあたるENCについても、3機種とも記載がない。ANCは耳に届く音、ENCは相手に届く音の話で、別のものだ。
この帯の製品は、どれくらいで壊れるものなのか
掲載仕様からは分からない、というのが正確な答えになる。3機種とも耐久試験の数値も保証期間も商品ページに書いていないし、当店でも実機の耐久試験は行っていない。ただ一つ言えるのは、安いイヤホンを比べるときにバッテリー容量のmAhが書かれていないと、何年で持ちが落ちるかを見積もる材料がそもそもない、ということだ。
3,000円と5,000円で、何が変わるのか
今回の3機種の範囲では、変わるのは形であって性能の数字ではない。約2,300円の機種は低背の一体型で、片側0.08オンス(約2.3g)という重さまで書かれている。約3,100円と約3,700円の2機種はどちらもステム型で、耳を塞ぐ感じが少ない代わりに、数字はほとんど出てこない。予算をこの帯の上限まで引き上げても、埋まる欄が増えるとは限らない。
5,000円の枠に、何を残すか
予算を5,000円以下に固定した時点で、コーデックの明示、防水等級、電池容量の数字は、少なくとも今回の3機種では手に入らない。だから決め方は、この帯で手に入るものの中から何を優先するかになる。
耳への当たりを軽くしたい、横向きで寝る時間が長い、という条件が先に来るなら、片側0.08オンス(約2.3g)と書かれた低背の形で、イヤーピースが2サイズ用意されているEARSOLE True Wireless Earbuds Series 161(執筆時点で$14.99)。数字が出ている唯一の機種でもあるが、その再生時間の記述が内部で食い違っている点は、上に書いたとおりだ。
記載の正直さを優先するなら、Bluetoothのバージョンも電池も防水もマイク性能も「資料がないので主張しない」と自分で書いているFactory Direct のホワイト($19.99)。分かっていることが少ないと明示されている分、期待の置きどころを間違えにくい。耳を塞ぐ感じが苦手で通話が多いなら、ANCがないことも防水等級の記載がないことも商品ページ側が先に書いているセミインイヤーのブラック($23.99)が候補になる。
この価格帯で他の形も見るなら普段使いのワイヤレスイヤホン一覧から、円での表示を確認しながら選ぶならストアから、耳の形や接続まわりの話をもう少し読むなら記事一覧から辿れる。
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