カナル型とインナーイヤー型を分けているのは、イヤーピースで耳の穴をふさぐかどうかの一点だ。遮音も低音の出方も圧迫感も落ちにくさも、そこから派生している。だから先に決めるのは音の好みではなく、通勤中に外の音が減ってほしいかどうかになる。インナーイヤー型イヤホンを選ぶと、商品ページから防水等級や連続再生時間の欄そのものが消えることもある。EARSOLEの2機種を同じ10項目で並べたところ、片方は7項目が「記載なし」で、もう片方は9項目に具体的な数字や語が入っていた。
密閉するかどうかが、五つのことを同時に決めている
カナル型は先端のイヤーピースが耳の穴の壁に当たり、栓のように空間を閉じる。閉じると外の音が物理的に減り、低音は逃げ場を失って耳の中に残る。同時に、閉じた空間の圧力が変わるので、人によっては飛行機に乗ったときのような詰まった感じが出る。この四つ――遮音、低音、圧迫感、そして耳の穴に引っかかることによる落ちにくさ――は別々の性質ではなく、同じ一つの構造から出てくる。
耳の入口のくぼみに本体を置くだけの形は逆になる。外の音はほぼそのまま入り、低音は耳の外へ抜けるので薄く感じ、圧迫感は出にくく、引っかかりがないぶん動くと落ちやすい。片方だけを取るということができない。遮音がほしいのに圧迫感は嫌だ、という要望は、この構造上どちらかを諦めることになる。
もう一つ、日本の通勤で効いてくるのが漏音だ。密閉すると音は耳の中に閉じ込められるので、同じ音量なら周囲に漏れにくい。ふさがない形は音の出口が耳の外に近いぶん、静かな車内では隣の人に届きやすくなる。そして遮音がないと周囲の騒音に負けて音量を上げがちになるので、漏れる量はさらに増える。ふさがない形を静かな場所で使うときは、音量を上げないほうが結果的に静かに使える。
形が変わると、仕様欄そのものが消える
形の違いは装着感だけの話ではない。密閉する形は密閉を前提にした機能が載るので、仕様欄の行数が増える。ふさがない形はその行が最初から存在しない。買う前に読む量そのものが変わる、ということでもある。

| 商品ページで見る欄 | セミインイヤー型($23.99) | カナル型($27.99) |
|---|---|---|
| 耳の穴の密閉 | 深い密閉はしないと明記 | 耳の中に入れる形、シリコンのイヤーキャップと記載 |
| イヤーピース | 同梱物はイヤホン1組と充電ケースのみ | シリコン製と記載。サイズ展開の記載はなし |
| Bluetoothバージョン | 記載なし(標準的なBluetooth対応とのみ) | Bluetooth 5.4 |
| コーデック | 記載なし | AACとSBC |
| ドライバー | 記載なし(ステレオとのみ) | 14.2mmデュアルダイナミック |
| 騒音処理 | ANCなしと明記。マイクは通話の声を拾うためと明記 | ENCと記載。ANCの記載はなし |
| 連続再生 | 記載なし | 単体6〜8時間、ケース併用で最大30時間 |
| 防水 | 等級の記載なし(液体を近づけないよう明記) | 「IP7」と記載 |
| 通信距離 | 記載なし | 最大15m |
| 技適マーク | 記載なし | 記載なし |
読むときに注意したい行が二つある。まず騒音処理だ。カナル型ワイヤレスイヤホンは商品名に「Noise Cancelling」が入っているが、本文に書かれているのはENC、つまり通話相手に届く自分の声からノイズを減らすマイク側の処理で、ANCではない。この機種で電車の音が小さくなるとしたら、それはイヤーピースがふさいでいるからであって、電子的に打ち消しているからではない。もう一つが防水で、表記が「IP7」となっており、IPX4やIPX5のような一般的な等級の書き方になっていない。どの等級を指すのかは商品ページからは読み取れないので、水まわりで使う前提なら確認が要る。
いっぽうセミインイヤー型の機種は、ANCを搭載していないことも、内蔵マイクが通話用であることも、防水等級の記載がないことも、商品ページが自分で書いている。空欄が多いのは情報の出し惜しみではなく、密閉を前提にした行が構造的に存在しないからだ。
インナーイヤー型イヤホンが向く場面と、カナル型が向く場面
選び分けの基準は、一日のうちで長いほうの時間帯がどちらかだ。在宅の仕事中、家事の合間、コンビニまでの買い物、家族の呼びかけに返事をする必要がある時間――外の音を残しておきたい時間が長いなら、ふさがない形が合う。耳の穴に何も入らないので、数時間つけっぱなしにしても圧迫感が出にくい。眼鏡やマスクの紐と干渉する部分も少ない。
逆に、通勤で山手線や地下鉄に乗る時間が長い、オフィスの空調が気になる、あるいは低音がしっかり出ないと物足りない、という場合はカナル型になる。セミインイヤー型の商品ページのFAQ自体が、大きな騒音の中で強い遮音がほしい人、密閉に頼る低音がほしい人、激しい運動でしっかり固定したい人には、イヤーピース付きの機種のほうが合うと書いている。売り手が自分の商品の向かない用途を書いているところなので、そのまま受け取ってよい。
もう一つの分かれ道が運動だ。ふさがない形は耳のくぼみに載っているだけなので、走る、跳ぶ、頭を振るといった動きで位置がずれやすい。ずれると音の出口が耳の穴から外れて、低音がさらに痩せる。カナル型はイヤーピースが穴の壁に当たっているぶん保持力があるが、汗で滑ることもあるので、運動で使うなら防水等級の欄が読めるかどうかを先に見ておきたい。
セミインイヤーという中間と、その限界
耳に載せるが深くは密閉しない、という中間の形がセミインイヤーだ。日本の売り場では、インナーイヤー型と同じ棚にまとめて置かれていることが多い。ステム(軸)が下に伸びた形は握って抜き差ししやすく、マイクが口に少し近づく。

ただし中間の形は、遮音と圧迫感の両方を半分ずつ手に入れる装置ではない。密閉していない以上、遮音はほぼないと考えたほうがいい。得られるのは「圧迫感がなく、外の音が聞こえたまま音楽が鳴る」状態で、静かな部屋や在宅では快適だが、駅のホームでは音楽のほうが負ける。中間の形を選ぶときは、遮音を少し諦めるのではなく、遮音を使わないと決めるのに近い。
価格帯で見ると、この形は入りやすい位置にある。EARSOLEでいえば、白のセミインイヤー型が執筆時点で$19.99、円の目安で約3,100円、黒のセミインイヤー型が$23.99で約3,700円、カナル型が$27.99で約4,300円になる。日本の売り場でいうと、いわゆるコスパ帯の下のほうに収まる。ただしこの白の機種は、Bluetoothのバージョン、電池の持ち、ANC、防水、マイク性能、認証のいずれについても情報が提供されていないため主張しない、と商品ページに明記されている。安い機種でこの書き方に出会ったら、書かれていない欄は「未確認」として扱うのが安全だ。
海外から届く形になるので、価格はドル表示で、円の請求額は決済時のレートで動く。個人輸入では課税価格が一定額以下だと関税や消費税がかからない扱いがあるが、品目や配送方法で扱いが変わるため、最新の条件は税関の案内で確認してほしい。国内で無線機器を使う際の技適マークについては、上の表のとおり3機種とも商品ページに記載がない。
形を決めるときによく詰まるところ
カナル型のほうが音がいい、と考えてよいですか
低音に限れば、密閉している分だけ有利になりやすい。ただしそれは密閉が成立している場合の話で、イヤーピースのサイズが耳に合っていないと隙間から低音が抜け、ふさがない形と大差ない鳴り方になる。今回のカナル型はシリコン製のイヤーピースが付くと書かれているが、S・M・Lのようなサイズ展開については記載がないので、耳の穴が細い人や左右差がある人は、購入前に同梱サイズを確認しておきたい。
圧迫感が苦手なのですが、慣れるものですか
慣れる人もいるが、装着の仕方で減らせる部分もある。深く押し込まず、耳の穴の入口に軽く置いてから浅く回す程度で止めると、圧力の変化は小さくなる。それでも詰まった感じや自分の足音が響く感じが残るなら、構造上の相性なので、ふさがない形に替えたほうが早い。痛み、かゆみ、耳鳴り、聞こえ方の変化が出た場合は使用をやめ、医療機関で相談してください。
通話はどちらが有利ですか
マイクの位置と処理次第で、形だけでは決まらない。ステムが下に伸びた形はマイクが口に近づくぶん有利になりやすく、密閉する形は自分の声が頭の中で響いて話しにくく感じることがある。仕様欄で見るならENCの記載があるかどうかで、今回の2機種ではカナル型だけがENCと書いている。セミインイヤー型はマイクの用途が通話の声を拾うことだと書かれているだけで、処理についての記載はない。
ふさがない形でも、外を歩くときは安全ですか
外の音が入るのは事実だが、音楽を鳴らしている以上、注意はそちらに向く。交通量のある道や自転車では、音量を下げるか片方だけにするかを決めておきたい。自治体によっては自転車での使用が条例で制限されている場合があるので、通学や通勤の経路で日常的に使うなら、地域の規則を先に確認しておくほうがいい。
どちらを選ぶか、最後の一手
迷ったら、直近の一週間で「外の音が邪魔だった時間」と「外の音が聞こえていて助かった時間」を思い出して、長いほうを取る。音質から入ると決まらないが、この順番なら決まる。そのうえで商品ページに戻り、密閉する形なら防水とイヤーピースのサイズの欄を、ふさがない形ならANCの有無とマイクの用途の欄を確認しておくと、届いてからの落差が小さくなる。
ここまでの内容は、いずれもEARSOLEの商品ページに掲載されている仕様と画像から読める範囲の整理で、当店の実測に基づくものではない。ふさぐ・ふさがない以外の分かれ方――左右一体型やクリップ型を含めた全体の地図はイヤホンの形を決める二つの軸に、ANCとENCの効き方の違いはノイキャンイヤホンの見分け方にまとめてある。同じ順番でもっと多くの機種の欄を見比べたいときは、普段使いワイヤレスイヤホンの各商品ページを表の行の順に読んでいくと、空欄の位置の違いが見えてくる。
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