ノイキャンイヤホンで実際に小さくなるのは、電車の走行音や空調の唸りのような低く続く音で、駅のアナウンスや店内放送の人の声はほとんど残る。効き方を決めているのは商品名ではなく、商品ページの騒音処理の欄に「ANC」と書かれているか「ENC」と書かれているかだ。EARSOLEの3機種でいうと、名前に「Noise Cancelling」が入っている1機種の欄には、ENCと書かれている。
「ノイズキャンセリング」は、中身の違う3つをまとめて呼んでいる
ANC(アクティブノイズキャンセリング)は、本体の外側に付いたマイクで周囲の音を拾い、波形を反転させた音をぶつけて打ち消す仕組みだ。処理をする回路と、それを動かす電力が要る。得意なのは低い周波数で連続している音、つまり車両の走行音、飛行機のキャビン音、換気扇やエアコンの唸りといったあたりになる。
ENCは略語が一文字違うだけだが、働く場所はまるで違う。通話中にマイクが拾った自分の声から周囲の雑音を差し引き、相手のスマホに届く音をきれいにする処理だ。ENCがどれだけ優秀でも、自分の耳に届く走行音は変わらない。オンライン会議や歩きながらの通話では効くが、無言で音楽を聴いている電車内では出番がない。
3つ目のパッシブ遮音は、電子回路をまったく使わない。シリコンのイヤーピースが耳道をふさぎ、物理的に音を減らす。ANC搭載機で「意外と静かだ」と感じる部分のかなりは、実はこの密閉によるものだ。イヤーピースのサイズが耳に合っていなければ、同じ機種でも静かさは出ない。ワイヤレスイヤホンのノイズキャンセリングを比べるときに、電子的な機能欄より先に装着形状の欄を見たほうが早い理由がここにある。
この切り分けは、こちらが勝手に持ち込んだ整理ではない。LCDタッチスクリーンケース付きモデルの商品ページのFAQは、ANCとENCは別の仕事をすると自分で書いたうえで、どちらも世界を無音にはしない、近くの声や突発音は通り抜ける、と続けている。

電車では効いて、駅のアナウンスでは効かない
ANCが得意なのは、次にどんな波形が来るかを予測できる音だ。走行音や空調音のように低くて一定に続く音は、反転させた波を当てるのが間に合う。逆に、ホームの発車放送や車内の会話のような人の声は、周波数が高めなうえに始まりと終わりが突然で、打ち消す処理が追いつかない。
Smart Pro 3の商品ページも、そこは自分で書いている。ANCが効くのはエンジン音、ファン、キャビンの唸りのような定常的で低い音であり、突発音や近くの人の声、高い音は小さくなっても通り抜ける、という趣旨だ。同じFAQは続けて、よく密閉したシリコンのイヤーピースは電子回路と同じくらい効く、とも書いている。
この差は日本の通勤で毎日はっきり出る。地下区間で走行音が落ちて音楽が聴きやすくなる一方、ホームの発車メロディや車内の「次は――」は、ANCを入れていてもだいたい聞こえる。コンビニやドラッグストアの店内放送も同じ理由で残る。静けさの体感を上げたいなら、機能欄を追うよりイヤーピースを合わせるほうが効く場面が多い。
外の音を聞きたい場面で使うのは、別の機能
逆に、放送や改札のアナウンスを積極的に聞き取りたい場面で使うのはANCではなく、外音取り込み(トランスペアレンシー)と呼ばれる機能だ。外側のマイクで拾った音をあえて耳に流し込むので、イヤホンを外さずに周囲の会話や案内を聞ける。ただし、ここで挙げている3機種は、いずれも商品ページの仕様表に外音取り込みの記載がない。降車駅の放送を聞き逃したくない使い方が中心なら、この欄が空いていることは織り込んで選ぶ必要がある。
音量を上げずに済む、という効き方
ANCの実用的な価値は、静けさそのものより、うるさい場所で音量を上げなくて済む点にある。世界保健機関(WHO)の安全な聴取に関する解説は、機器の音量を最大の60%以下に保つことを挙げたうえで、うるさい状況で音量を上げる必要を減らすために、よく合った、ノイズキャンセリング機能のあるヘッドホンを使うことを勧めている。満員電車で無意識に音量を上げがちな人にとっては、遮音とANCで下げられた分が、そのまま耳の負担の差になる。
痛み、かゆみ、耳鳴り、聞こえ方の変化が出た場合は使用をやめ、医療機関で相談してください。
ノイキャンイヤホンは、商品ページのこの欄で見分ける
見る場所は決まっている。仕様表の騒音処理の欄に「ANC」があるか、「ENC」があるか、両方あるか、何も書かれていないか。この4通りしかない。下の表は、EARSOLEの3機種について、その欄と、判断に効いてくる周辺の欄を、執筆時点の掲載内容と価格のまま並べたものだ。空白ではなく「記載なし」と書いてあるところが、この価格帯ではむしろ判断材料になる。
| 見る欄 | Smart(LCDケース) $49.99/約7,700円 |
Smart Pro 3 $59.99/約9,300円 |
Noise Cancelling $27.99/約4,300円 |
|---|---|---|---|
| 仕様表の騒音処理欄 | ANCとENCの両方 | ANC(ENCの記載なし) | ENC(通話時。ANCの記載なし) |
| 掲載画像に重ねられた表記 | 「ANC + ENC NOISE REDUCTION」。数値なし | 「ACTIVE NOISE CANCELLATION/周囲の気になる音を低減」。数値なし | 「40dB Deep Noise Cancellation」+風切り音を抑えて通話をなめらかにする旨の英文 |
| 外音取り込み | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
| Bluetooth | 5.4 | 記載なし | 5.4(通信距離15mと記載) |
| コーデック | 記載なし | 記載なし | AAC・SBC |
| 装着形状 | カナル型(シリコンイヤーピース、ステム付き) | カナル型(シリコンイヤーピース) | カナル型(シリコンイヤーピース) |
| イヤーピースのサイズ展開 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
| 防水等級 | FAQで「等級の記載はない」と明言 | 記載なし | 「IP7」と記載(等級の数字が2桁そろっていない) |
| 再生時間・電池容量 | どちらも記載なし | どちらも記載なし | 単体6〜8時間、ケース併用で最大30時間。mAhの記載はなし |
| ドライバー | 記載なし | 記載なし | 14.2mm |
| ケース側の表示 | フルカラー液晶タッチ画面(中国語/英語) | 透明ふたのケース(表示の記載なし) | LEDの残量表示 |
表の2行目が、この記事でいちばん見てほしいところだ。Noise Cancelling True Wireless Earbudsは商品名に「Noise Cancelling」が入り、掲載画像にも「40dB」という大きな数字が載っている。ところが同じ画像の英文は、風切り音を抑えて通話をなめらかにすると説明していて、仕様表側の記載もENC、つまり通話マイク側の処理だ。この数字がどんな条件で測られたものかは商品ページに書かれておらず、当店でも検証していない。耳に届く走行音を減らすつもりでこの機種を選ぶと、期待とずれる。

対照的に、騒音処理欄にANCと明記されているのはSmart Wireless Earbuds(LCDタッチスクリーンケース)とSmart Pro 3の2機種で、前者はANCとENCが並記されている。通勤中は耳に届く音を減らし、会議では相手に届く声を整えたい、という使い方なら、この並記があるかどうかが分かれ目になる。ノイズキャンセリングイヤホンのおすすめを機種名で決める前に、この欄に3つのうちどれが書かれているかを見たほうが早い。

もうひとつ、3機種に共通して空いている欄が3つある。イヤーピースのサイズ展開(S/M/Lなど)、マルチポイント(2台同時待ち受け)、そしてバッテリーのmAhだ。パッシブ遮音がANCの効きを左右する以上、サイズ展開が埋まっていないのは軽くない空欄で、手持ちのイヤーピースで詰める前提で考えたほうがいい。会社のPCとスマホを行き来する使い方も、記載がない以上は当てにしないほうが安全だ。防水についても、IPX4やIPX5のように数字が2桁そろった形の等級が書かれている機種は、この3つのなかにない。雨の日の通勤や運動で使うつもりなら、ここが空いていることのほうが騒音処理欄より先に効いてくる。価格の面では、この3機種はいずれも1台あたり1万円を下回り、日本のコスパ帯(おおむね3,000〜5,000円)から中価格帯(1万円前後)に収まる。海外からの発送なので、課税価格の合計が1万円以下かどうかという線の周辺に入る点は覚えておきたい。合計額は送料やまとめ買いで動くため、境目に近いときは注文前に税関の案内を確認してほしい。送料込みの支払額は全商品一覧から各商品ページに入って確かめられる。
有線イヤホンで、電子的な打ち消しは成立するのか
結論から言うと、有線イヤホンのノイズキャンセリングは成立しうるが、数はかなり少ない。ANCにはマイクと処理回路と電力が要る。3.5mmのイヤホンジャックに挿すだけの一般的な有線モデルには電源がないので、そこで得られる静けさはイヤーピースの密閉によるパッシブ遮音だけになる。
電子的に打ち消す有線モデルが存在する場合、電力の取り方はほぼ決まっている。USB-CやLightningの端子から給電を受けるか、ケーブルの途中に電池入りの箱を挟むかのどちらかだ。前者はスマホ側の端子形状と、その端子がオーディオ出力に対応しているかに依存する。購入前に、自分の端末の端子と、その商品が電源をどこから取るのかの2点を確かめておけば、まず外さない。パッシブ遮音のことを「ノイズキャンセル対応」と書いている商品説明も珍しくないので、電源の話が説明のどこにも出てこなければ、指しているのは物理的な遮音のほうだと思っておくといい。なお、この記事で挙げているEARSOLEの3機種はいずれも完全ワイヤレスで、有線モデルではない。
効き方のところでよく詰まる3点
ANCは常にオンにしておいて問題ありませんか
使い方の問題であって、故障の心配ではない。ただ、ANCを強めにかけると耳の中の圧が変わる感覚が出る人がいて、片道1時間の通勤ではむしろ疲れることがある。処理回路が動いている分だけ電池も減る。走行音が続く区間だけ入れて、駅では切る、という使い分けができると実際の使い勝手は上がる。EARSOLEの3機種の商品ページには、ANCの強さを段階で選べるという記載はない。
コーデックがAACだと、ノイキャンの効きも良くなりますか
変わらない。AAC、SBC、LDACといったコーデックは、Bluetoothで音声データをどう圧縮して送るかの規格で、耳元で騒音を打ち消す処理とは別系統だ。Bluetooth SIGの技術解説でも、この無線規格が担っているのは音声の伝送のほうだと説明されている。コーデックが効いてくるのは音質と遅延で、3機種のうちコーデックが明記されているのはNoise Cancellingだけ、iPhoneで一般的なAACとSBCが書かれている。残る2機種はこの欄が空いている。
手持ちのイヤーピースに替えると、効きは変わりますか
変わる可能性が高い。低い周波数を打ち消すANCは、耳道が密閉されている前提で設計されているので、サイズが合わずに隙間が空いていると効きは落ちる。Smart Pro 3の商品ページも、よく密閉したイヤーピースは電子回路と同じくらい効くという言い方をしている。3機種ともサイズ展開が書かれていないため、S/M/Lが揃った別売りのイヤーピースを1組用意しておくと、届いてから調整できる。
どこで線を引くか
- 耳に届く走行音を減らしたいなら、仕様表の騒音処理欄に「ANC」と書かれている機種を選ぶ。商品名や画像の数字ではなく、この欄で判断する。
- 通話の相手に自分の声をきれいに届けたいだけなら、ENCの記載で足りる。この用途にANCは要らない。
- 駅や店内の放送を聞き逃したくないなら、外音取り込みの欄を見る。3機種とも記載がないので、ここが要件なら別の探し方になる。
- どの機種を選んでも、イヤーピースが合っていなければ静かさは出ない。ここは届いてから自分で詰める部分だ。
ここまでの判断材料は、すべて商品ページに書かれている欄そのものだ。同じ欄をもっと多くの機種で並べたいときは、普段使いワイヤレスイヤホンの各商品ページを、騒音処理欄から順に同じ順番で読んでいくと、記載の有無の差が見えてくる。
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