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ガイド · ワイヤレスイヤホン

ワイヤレスイヤホンの音を分けているのは、コーデック名より耳を塞ぐ形かどうか

· 執筆: Rowan Ellis

白いイヤホン本体2つが、丸みのある白い充電ケースの上に浮いている商品画像。本体はステム付きで、先端にシリコンのイヤーピースが付いている。ケースのふたは透明で、本体を置く側の中央に緑色の小さなランプが点いている。白背景

ワイヤレスイヤホンの高音質ランキングを自分で作るなら、順位を分けるのはコーデック名より先に、耳の穴を塞ぐ形かどうかだ。塞げば低音は耳の中に残り、塞がなければ抜ける。EARSOLEの2機種はここが正反対で、片方はシリコンのイヤーピースで密閉するカナル型、もう片方はイヤーピースを使わないセミインイヤー。この一点だけで、重低音を求める人とボーカルの抜けを求める人の行き先は分かれる。

耳を塞ぐか、置くだけか。低音の量感はここで変わる

低音は波長が長く、密閉が崩れたところから逃げやすい。イヤーピースで耳の穴を塞ぐカナル型は逃げ道を物理的に減らすので、低音が量として耳に残る。耳の入口に本体を置くセミインイヤーは逃げ道を残したままなので、同じ音源でも低域は軽く聞こえる。EARSOLE Smart Pro 3の商品ページはソフトシリコンのイヤーピースで密閉する形だと書き、Spatial Audioの商品ページは深く密閉しない形で、保持力と遮音が緩くなるというトレードオフを自分で書いている。

この差は、機種の違いだけでなく装着のたびにも動く。Smart Pro 3の商品ページも、緩さや圧迫を感じたら入れる角度を変えるように書いていて、快適さはイヤーピースの座り方でほぼ決まるとしている。裏を返せば、同じ機種でもイヤーピースが浅く座っていれば低音は減る。音質のいいイヤホンを探して機種を入れ替える前に、手持ちの一組を一度きちんと座らせて聴き直したほうが差が出ることもある。

日本の売り場でよく使われる調音の言い方も、この形の話と地続きだ。低音と高音が持ち上がった派手なバランスをドンシャリ、中音域が厚く両端が控えめなバランスをカマボコと呼ぶ。女性ボーカルのイヤホン選びで効いてくるのは中音域から高域の側なので、ドンシャリ寄りの鳴り方で低音を盛ると、声が一歩奥に引っ込んで聞こえることがある。ここは好みの問題で、優劣ではない。

シャンパンゴールド、シルバーホワイト、グロッシーブラックの3色の充電ケース。それぞれ透明のふたの中にイヤーピースの付いていないイヤホン本体が2つ収まり、ケース前面に「100%」の数字とL・Rの電池残量バーが表示されている。白背景の商品画像
商品ページ掲載画像(EARSOLE Spatial Audio、3色)。ふたが透明なので、本体にイヤーピースが付いていないことが見える。前面の「100%」とL・Rのバーは満充電の状態を描いたスタジオ画像で、当店が測った表示ではない。

もうひとつ、イヤーピースそのものの話がある。密閉の度合いはサイズが耳に合っているかで変わるので、S・M・Lのように複数サイズが同梱されるかどうかは低音の量に直結する。Smart Pro 3の同梱物として商品ページに書かれているのは本体一組と充電ケースだけで、サイズ違いのイヤーピースが付くかどうかは書かれていない。

「ハイレゾ対応」と「空間オーディオ」は、別々の話

ハイレゾ対応のイヤホンかどうかは、聴いた感想ではなくロゴのライセンスで決まる。日本オーディオ協会はHi-Res AUDIOロゴとHi-Res AUDIO WIRELESSロゴを商標として管理していて、掲げるには要件を満たしたうえでライセンス契約が要る。同協会が公開している要件では、アナログ側は40kHz以上の高域再生性能、デジタル側は96kHz/24bit以上が基準に挙げられている。つまりハイレゾという表示は、音の優劣の評価ではなく、決められた帯域と量子化の条件を満たしているという申告だ。

ワイヤレスで情報量の多い信号を送るには、送信側と受信側の両方が同じコーデックに対応している必要がある。イヤホン側がLDACやLHDC、aptX Adaptiveに対応していても、手元のスマートフォンが出せなければ、接続はSBCやAACといった基本のコーデックに落ちる。仕様欄にコーデック名が並んでいるかどうかだけでは決まらない、ということだ。EARSOLEの2機種は、どちらも商品ページにコーデックの記載がなく、ハイレゾ関連のロゴの記載もない。入門機として、その主張をしていないと読むのが正しい。

コーデックの側も止まってはいない。Bluetooth SIGはLE Audioという枠組みを公開していて、そこで使われるLC3について、広範な聴取試験の結果、ビットレートが50%低くてもClassic AudioのSBCより音質が向上することが示された、と説明している。数年単位で仕様欄の読み方が変わる項目なので、いま検討している機種のコーデック欄が空いているなら、空いているまま受け取っておくのがいい。

青いスタジオ背景に置かれた透明ふたの充電ケースと、英語の見出しが4つ重ねられた販促画像。見出しは「360° SPATIAL AUDIO / Immersive surround-style sound」「DIRECTIONAL SOUND / Focused personal listening」「DIGITAL CHARGE DISPLAY / Case and L/R levels at a glance」「CLEAR-LID CASE / See the earbuds while stored」
商品ページ掲載の供給元販促画像。英語の売り文句が4つ重ねられていて、上の2つが空間オーディオと指向性処理の説明にあたる。効果の程度や測定値を示すものではない。

空間オーディオは、この解像度の話とは別の層にある。音の位置を処理で広げ、頭の中で鳴っている感じを減らす仕組みで、送られてくる音のビット深度やサンプリング周波数を上げるものではない。EARSOLE Spatial Audioの商品ページも、効果の程度は再生する内容によって変わり、スピーカーを並べた部屋の代わりにはならないと書いている。映画や対応した音源では広がって聞こえるが、手持ちの曲すべてで効くとは限らない。

ワイヤレスイヤホンの高音質ランキング、順位を分ける6行

2機種の商品ページから、音に効く6行だけを抜き出して同じ順番に並べた。価格は執筆時点の表示価格。空欄が多いこと自体はこの価格帯では珍しくなく、問題はどの行が空いているかだ。

音に効く行 Spatial Audio($37.99) Smart Pro 3($59.99) この行から読めること/読めないこと
装着方式 セミインイヤー、短いステム。深く密閉しないと明記 カナル型。ソフトシリコンのイヤーピースで密閉すると明記 両方とも埋まっている行。低音の量感と遮音の出発点はここで決まる
ノイズ処理 記載なし ANC(アクティブノイズキャンセリング)と明記 走行音の中で音量を上げずに済むかどうか
空間オーディオ 360度、指向性のある処理と明記 対応と明記 効果の大きさは音源側に依存し、記載からは読めない
コーデック 記載なし 記載なし SBCやAACで止まるのか、より高ビットレートまで届くのかが分からない
ドライバーと周波数特性 記載なし 記載なし ドンシャリ寄りかカマボコ寄りかを事前に推し量る手掛かりがない
ハイレゾ関連のロゴ 記載なし 記載なし 96kHz/24bit級の要件を満たしているという申告は、していない

埋まっているのは上の3行で、下の3行は両方とも空いている。裏返すと、この2機種は「どんな信号を受けるか」ではなく「どう耳に届けるか」の側だけを説明している製品だ。密閉するかどうかと、耳に届く騒音をANCで減らすかどうか。音に関して事前に判断できるのは、実質この2点になる。Smart Pro 3の商品ページはANCについても、エンジン音や空調音のような定常的な低い音によく効き、突発音や近くの話し声は小さくなるだけで残る、と書いている。静かにできれば小さい音量でも細部が聞こえるので、遮音は音質側の話でもある。

2機種を円に置き直すと、どのあたりの買い物か

国内でこの種の製品を探すと、100円ショップの1,100円クラスから、3,000〜5,000円のコスパ帯、10,000円前後の中級機、30,000円を超える上位機まで並ぶ。EARSOLEの2機種は執筆時点の表示価格で$37.99と$59.99。1ドル155円で換算するとおよそ5,900円と9,300円になり、コスパ帯の上と、中級機の手前に入る。表示はUSDなので、実際の円換算額は決済時のレートで動く。

この帯の高音質ワイヤレスイヤホンに現実的に期待できるのは、安定した接続と、選んだ装着方式なりの鳴り方までだ。ハイレゾワイヤレスのロゴや高ビットレートのコーデックが議論になるのは、もう一段上の価格帯からになる。2機種の商品ページがそこを主張していないのは、書き落としではなく、そういう位置づけの製品だからだと読んでいる。

海外からの発送になる点も先に見ておきたい。金額や品目によって関税・消費税の扱いが変わることがあるので、注文前に配送条件と税の扱いを商品ページで確認しておくと安心だ。国内で使う無線機器に関わる技適マークについては、2機種とも商品ページに取得の記載がなく、当店として確認が取れていない。Spatial Audioの商品ページのように、書かれていない項目がそのまま空欄になっている前提で読んでいくことになる。

ハイレゾと空間オーディオについて届く質問

ハイレゾ対応と書かれていないイヤホンは、音が悪いということですか

そうとは限らない。ハイレゾのロゴは、決められた帯域と量子化の条件を満たしたうえでライセンスを受けた製品が掲げるもので、記載がないことは条件を満たしていると申告していない、という意味だ。実際に耳で感じる違いは、イヤーピースの密閉、装着の角度、音量、再生する音源の状態のほうが先に効いてくる。ロゴの有無は、優先順位としてはその後ろに置いていい。

空間オーディオをオンにすると音質は上がりますか

上がるのではなく、変わる。空間オーディオは音の位置を処理で広げて、頭の中で鳴っている感じを減らす仕組みで、送られてくる信号の情報量を増やすものではない。効き方は音源側に依存し、Spatial Audioの商品ページも、効果の程度は内容によって変わりスピーカーを並べた部屋の代わりにはならないと書いている。広がりが不要な曲では切ったほうが素直に聞こえることもある。

重低音が足りないとき、イコライザーで足せますか

ある程度は足せるが、密閉が緩い形では限界が早く来る。イヤーピースで塞いでいない状態で低域を大きく持ち上げると、量が増える前に音が濁ったり、音量そのものを上げることになったりしやすい。低音を量として欲しいなら、設定より先にイヤーピースの座り方を直すほうが確実だ。カナル型を選び、耳に合うサイズで正しく座らせたうえで、必要なら少しだけ足す順番になる。

重低音側か、抜け側か

  • 低音を量として欲しい、電車や機内の定常音を減らして小さい音量で聴きたいなら、密閉するカナル型でANCの記載があるSmart Pro 3。ただしイヤーピースのサイズ展開は商品ページに書かれていない。
  • 耳を塞がれるのが苦手、静かな部屋で長く着けたい、残量を数字で見たいならセミインイヤーのSpatial Audio。低音の量は割り切りが要る。

音質重視でワイヤレスイヤホンを絞り込むなら、まず密閉するかどうかを決め、次にANCの記載を見て、コーデックとハイレゾのロゴは空欄なら空欄のまま扱う。この順番なら、書かれていない項目を値段から想像せずに済む。いずれも掲載仕様から読める範囲の判断で、当店の実測に基づくものではない。同じ6行をもっと多くの機種で並べたいときはスマートイヤホンから、他のカテゴリーも含めて見るなら商品一覧から、各商品ページの仕様表を同じ順番で読んでいくと、空欄の位置の違いが見えてくる。読み物をまとめて見るなら記事一覧にある。

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